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「退職したあとの健康保険、任意継続と国保のどっちが安いんだろう」
「調べても『人によります』としか書いていなくて、結局わからない」
そんなふうに迷っていませんか。
先に結論をお伝えします。どちらが安いかは、ネットの情報だけでは分かりません。保険料はお住まいの市区町村と、あなたの前年の収入と、ご家族の人数で決まるからです。同じ年収でも、住む場所が違えば金額が変わります。
でも、がっかりしないでください。答えは「3か所」に聞けば、退職前に確定できます。しかも、どこも無料で教えてくれます。この記事では、その聞き方までまるごとお伝えします。
この記事で分かることは、次の5つです。
ボクは福岡で活動している独立系FPの鳥谷威(とりや たけし)です。CFP®認定者・1級ファイナンシャル・プランニング技能士で、銀行や証券会社に所属せず、金融商品の販売もしていません。退職前後のご相談を数多くお受けしてきたなかで、この健康保険の話は「知らないまま選んで、あとから気づく」ことが特に多いと感じています。
難しい計算は必要ありません。焦らなくて大丈夫です。順番に見ていきましょう。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。保険料率・限度額は毎年度改定されます。記事内の金額は協会けんぽ福岡支部および福岡市の令和8年度の数値を用いた一例であり、お住まいの地域・加入している健康保険によって異なります。実際の金額は必ずご自身でご確認ください。
この記事は長めですので、気になるところから読んでいただけます。
会社を辞めると、それまで使っていた健康保険証は使えなくなります。日本は国民皆保険ですので、次の健康保険に入る手続きを、自分でしなければなりません。
選べるのは、大きく3つです。

1つ目は任意継続。会社で入っていた健康保険に、退職後も最長2年間そのまま入り続ける制度です。
ここで、いちばん大事なことをお伝えします。会社員のあいだ、健康保険料はあなたと会社が半分ずつ負担していました。いわゆる労使折半です。ところが退職すると、その会社の負担分がなくなります。
つまり、同じ保険なのに、支払う額は2倍になるということです。協会けんぽも公式に「退職時の健康保険料の2倍となります」と案内しています。給与明細に載っていた金額の2倍だとお考えください。
ただし、ここに救いがあります。上限が設けられているのです。

協会けんぽの場合、令和8年度(2026年度)の任意継続の標準報酬月額の上限は32万円です。給与が月50万円だった方も、月80万円だった方も、この32万円をもとに計算されます。
具体的に見てみましょう。福岡支部・40〜64歳の方の場合、保険料率は合計11.96%(健康保険10.11%+子ども・子育て支援金0.23%+介護保険1.62%)。上限の32万円で計算すると、月38,272円になります。
ここで、月収50万円だった方の在職中の負担と比べてみます。50万円×11.96%÷2=月29,900円でした。任意継続だと38,272円ですから、実際の負担は約1.3倍。2倍まではいきません。給与が高かった方ほど、この上限のおかげで割安に感じられるはずです。
逆にいえば、もともとのお給料がそれほど高くなかった方は、上限の恩恵を受けられず、素直に2倍近くになるということでもあります。ここが分かれ目です。
※上限額は毎年12月に翌年度分が公表され、改定されます(令和7年3月分までは30万円でした)。健康保険組合にお勤めだった方は、組合ごとに上限が異なりますので、必ずご自身の組合にご確認ください。
2つ目は国民健康保険(国保)。お住まいの市区町村が運営している保険です。
国保でいちばん注意していただきたいのが、保険料が「前年の所得」で決まるという点です。
これは何を意味するか。退職して収入がゼロになった1年目も、バリバリ働いていた去年の収入をもとに保険料が計算されるということです。「無収入なのに、こんなに請求が来るのか」と驚かれる方が多いのは、これが理由です。
そして、もう1つ。国保には「扶養」という考え方がありません。会社の健康保険なら、奥さまやお子さんを扶養に入れても保険料は増えませんでした。ところが国保は、加入する人数分だけ「均等割」がかかります。ご家族が多いほど、金額は上がっていきます。
国保にも上限(賦課限度額)はありますが、任意継続よりずっと高い位置にあります。福岡市の令和8年度でいえば、40〜64歳の方で年間113万円(基礎分67万円+支援分26万円+介護分17万円+子ども分3万円)。40歳未満と65歳以上の方は介護分がないため96万円です。月に直すと9万円を超える計算になります。
「ストッパーはあるけれど、はるかに高いところにある」。そうお考えください。
3つ目はご家族の扶養に入るという選択肢です。じつは、これがいちばん見落とされています。
お子さんやご家族が会社員で健康保険に入っていれば、その扶養に入れる場合があります。保険料の負担はゼロです。しかも、何人扶養に入っても、扶養する側の保険料は1円も増えません。使えるなら、これがいちばん有利です。
ただし条件があります。原則として年収130万円未満(60歳以上の方、または障害年金を受けている方は180万円未満)で、かつ扶養するご家族の年収の半分未満であることです。
ここで多くの方が誤解されるのですが、この年収は「去年いくら稼いだか」ではなく「これから1年間でいくら見込まれるか」で判定されます。去年1,000万円稼いでいた方でも、退職後の見込みが130万円未満なら、要件を満たす可能性があるわけです。
ただし、落とし穴が2つあります。
2つ目は特に見落とされがちです。保険料はゼロでも、いざ大きな医療費がかかったときの上限額が高くなる可能性がある。ここは知っておいてくださいね。
では、いよいよ本題です。実際の金額で比べてみましょう。
ここでは福岡市にお住まいの方を例にします。金額は協会けんぽ福岡支部と福岡市が公表している令和8年度の数値を使っています。
59歳・年収500万円・おひとり暮らしのAさんで見てみます。
| 選択肢 | 年間の保険料 | 月あたり |
|---|---|---|
| 任意継続(上限32万円) | 459,264円 | 約38,272円 |
| 国民健康保険(1人世帯) | 441,900円 | 約36,825円 |
| 差 | 約17,000円 | 約1,400円 |
いかがでしょうか。差は月に1,400円ほど。1年で約17,000円です。「思ったより差がない」と感じられたのではないでしょうか。
この程度の差なら、金額だけで決めるのではなく、ほかの要素も含めて考える価値があります。任意継続なら健康保険組合の人間ドック補助が引き続き使える場合がありますし、国保なら翌年に保険料がぐっと下がります。
では、奥さまが専業主婦のBさん(59歳・年収500万円)の場合はどうでしょうか。

| 選択肢 | 年間の保険料 | 月あたり |
|---|---|---|
| 任意継続(奥さまも扶養に入れる) | 459,264円 | 約38,272円 |
| 国民健康保険(2人世帯) | 483,300円 | 約40,275円 |
| 差 | 約24,000円 | 約2,000円 |
お気づきでしょうか。単身のときは国保が安かったのに、夫婦2人になると任意継続のほうが安くなりました。
理由はシンプルです。任意継続なら奥さまを扶養に入れても保険料は変わりませんが、国保は人数分の均等割が加わるからです。
つまり、ご家族の人数が多いほど、任意継続が有利になりやすい。これがひとつの目安になります。
さらにややこしいことに、国保の保険料は市区町村ごとに違います。同じ年収・同じ家族構成でも、住んでいる市が違えば金額が変わるのです。
「ネットで見た金額と違う」というのは、たいていこれが原因です。だからこそ、次にお話しする「3か所に聞く」という方法が確実なんですね。
ここまで読んで、「じゃあ自分の場合はいくらなんだろう」と気になった方もいらっしゃると思います。公式LINEでは、退職前後のお金を整理するための資料をはじめ、11の特典を無料でお渡ししています。この記事の続きとして使っていただけます。
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
「人によります」で終わらせず、あなたの金額を退職前に確定させる方法があります。3か所に聞くだけです。どこも無料で教えてくれます。

まず、いま入っている健康保険に聞きます。保険証に書かれている「協会けんぽ ○○支部」または「○○健康保険組合」が連絡先です。聞くことは1つだけ。
「◯月末で退職予定です。任意継続にした場合、月々の保険料はいくらになりますか」
これで具体的な金額を教えてもらえます。あわせて「人間ドックの補助は任意継続でも使えますか」と聞いておくと、金額以外の判断材料も手に入ります。
次に、お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口です。「◯◯市 国民健康保険 窓口」で検索すれば出てきます。ここでは、こう聞いてください。
「◯月末で退職します。国民健康保険に入った場合の保険料を試算していただけますか。昨年の収入は◯◯万円、加入するのは◯人です」
源泉徴収票か住民税の通知書を手元に置いておくとスムーズです。多くの市区町村では、ホームページに保険料の目安表を載せていますので、そちらでも確認できます。
3つ目が、いちばん忘れられがちなところ。扶養に入れる可能性がある場合は、そのご家族の勤務先に確認します。
「親を扶養に入れたいのですが、条件と必要な書類を教えてください」
お子さんに聞いてもらう形になりますが、保険料がゼロになる可能性がある以上、確認する価値は十分にあります。
3か所から数字をもらったら、あとは並べるだけです。
| 選択肢 | 月額 | 年額 | 金額以外の判断材料 |
|---|---|---|---|
| 任意継続 | 円 | 円 | 健診の補助・付加給付 |
| 国民健康保険 | 円 | 円 | 2年目は下がる見込み |
| 家族の扶養 | 0円 | 0円 | 条件を満たすか・限度額の区分 |
数字が並べば、迷いは消えます。「人によります」と言われていたものが、あなたの数字として確定するんですね。
ここからは、知っているかどうかで金額が大きく変わる話です。
倒産、解雇、雇い止めなど、ご自身の意思ではない理由で退職された方には、国保の保険料を大きく軽減する制度があります。「非自発的失業者の軽減措置」といいます。
どれくらい下がるのか。前年の給与所得を「100分の30」とみなして計算してくれます。つまり、給与所得が実際の3割として扱われるわけです。

しかもこの軽減は、保険料の計算だけでなく均等割・平等割の減額判定にも効きます。下がり方はかなり大きいとお考えください。ただし2つ、注意点があります。
会社都合で辞められた方は、任意継続を選ぶ前に必ず国保の試算をしてもらってください。この軽減で逆転することが、よくあります。
もう1つが、1年目は任意継続、2年目から国保という組み合わせです。
なぜこれが効くのか。国保は前年の所得で決まりますから、退職して収入が減った翌年は、保険料がぐっと下がります。一方の任意継続は、2年間ずっと同じ金額です。だから2年目は国保のほうが安くなることが多いんですね。

以前は、任意継続をやめるには「保険料をわざと払わない」という方法しかありませんでした。しかし2022年1月から、本人の申し出だけでやめられるようになりました。堂々と乗り換えられます。
「1年目は任意継続で様子を見て、2年目の保険料を国保の窓口で試算してもらい、安いほうへ移る」。これがひとつの現実的な進め方です。
どれを選ぶにしても、期限があります。ここは押さえておいてください。
| 選択肢 | 期限 | どこへ |
|---|---|---|
| 任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 | 協会けんぽの支部/健康保険組合 |
| 国民健康保険 | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村の窓口 |
| 家族の扶養 | すみやかに(勤務先の規定による) | ご家族の勤務先 |
任意継続の20日という期限は法律で決まっているもので、原則として過ぎると申請できません(保険者が正当な理由があると認めた場合の例外はあります)。迷っている時間はあまりないとお考えください。だからこそ、退職前に3か所へ聞いておくことが効いてきます。
「手続きが遅れて、保険証がない期間ができてしまった」。この場合はどうなるのでしょうか。
ご安心ください。国民健康保険は手続きが遅れても、資格は退職日の翌日にさかのぼって発生します。無保険の空白期間が生まれるわけではありません。
ただし、そのぶんの保険料はさかのぼって請求されます。「手続きしなかったから払わなくていい」ということにはなりません。そして手続きの前に病院にかかると、窓口でいったん全額を負担することになります(あとで申請すれば戻ってくる場合があります)。
放っておいて得することは、ひとつもありません。早めに動いてくださいね。
健康保険を考えるうえで、あわせて知っておいていただきたい変更があります。医療費が高額になったとき、自己負担に上限を設けてくれるのが高額療養費制度です。この上限額が、2026年8月から改定されました。

| 所得区分(年収の目安) | 1か月の自己負担限度額 |
|---|---|
| 約1,160万円〜 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% |
| 約770〜約1,160万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% |
| 約370〜約770万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| 〜約370万円 | 61,500円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 |
退職して収入が下がると、この区分も下がっていきます。つまり、いざというときの上限額も下がるということです。保険料の負担は増えますが、こちらは味方になってくれる部分ですね。
ただし先ほどお伝えしたとおり、ご家族の扶養に入る場合は、扶養してくれるご家族の所得で区分が決まります。ここだけはご注意ください。
原則として影響しません。退職金は退職所得として分離して課税される扱いで、国保の保険料を計算するもとになる「総所得金額等」には含まれないのが一般的です。
一方で、株の売却益や配当を確定申告した場合は、保険料に響くことがあります。退職前後に大きく利益確定をお考えの方は、この点も含めて順番を考えておくと安心です。
必要です。再就職して勤務先の健康保険に入ると任意継続の資格は失われますが、自動では終わりません。ご自身で資格喪失の届け出をする必要があります。
国保に入っていた方も同じで、市区町村への脱退の手続きが必要です。こちらも自動ではありません。放っておくと二重で請求が続いてしまいますので、新しい保険証が届いたら、すぐに手続きしてください。
はい、原則として2年間変わりません。協会けんぽも「保険料は、原則2年間変わりません」と案内しています(保険料率そのものが改定された場合は変わります)。
収入がゼロになっても下がらない。ここが国保との大きな違いで、2年目に乗り換えを考える理由でもあります。
任意継続は、納付期限を過ぎると原則として資格を失います(納付の遅れに正当な理由があると保険者が認めた場合を除きます)。国保のように分割の相談に応じてもらえる仕組みとは、性格が違います。口座振替にしておく、前納制度を使う。このどちらかで、うっかりを防いでおくのが安全です。
最後に整理します。

「どっちが安いか」は、ネットだけでは分かりません。でも3か所に聞けば、あなたの数字として確定します。しかも全部無料です。
退職は、人生の大きな節目です。健康保険はその入口にすぎませんが、ここでつまずくと、その後のお金の見通しも立てにくくなります。逆にここを整理できれば、次の一歩がずいぶん軽くなるはずです。
ボクは金融商品を売らない独立系FPですので、「この保険にしましょう」と決めつけることはありません。あなたが集めた3つの数字を一緒に眺めながら、これからの暮らしに合う選び方を考える。そんな使い方をしていただければうれしいです。焦らなくて大丈夫。一緒に考えていきましょう。
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